矯正治療を開始するにあたって、抜歯が必要かどうか不安に感じる方は少なくありません。「できれば歯を抜きたくない」と思っている方も多いでしょう。
しかし、インビザラインで矯正する場合も抜歯が必要なケースがあります。
この記事では、どのような場合に抜歯が必要になるのか、抜歯をするとどのようなメリット・デメリットがあるのかを解説します。インビザライン矯正を検討されていて、抜歯に不安がある方はぜひご参考にしてください。
目次
インビザラインで抜歯をするメリット
インビザライン矯正で抜歯をするメリットは、以下の4つです。
- 複雑な歯並びの場合も矯正治療が可能になる
- 口元の突出感を改善できる
- 横顔がきれいになるケースがある
- 効率よく歯を動かせる
「抜歯せずに矯正できたほうが良い」と思われている方もいますが、一概には言いきれません。症例によっては、抜歯をして十分なスペースを確保したほうがきれいに歯を並べられることがあるからです。
抜歯をするとその分スペースが生まれて歯を自由に移動させられるようになるため、ガタガタな歯並びでも整えやすくなります。出っ歯のケースでも、全体的に後ろに歯並びを移動できるため、口元が引っ込み横顔のラインもきれいになるでしょう。
抜歯が必要な症例なのに無理に抜歯せず矯正してしまうと、口元の突出感が改善できないこともあるのです。横から見た時に口元が出ていて、シルエットが美しくなくなるでしょう。
もちろん、軽度の歯並びの乱れであれば、抜歯をせずにインビザライン矯正できれいな歯並びにできますが、複雑な歯並びの場合は抜歯が必要になるケースが多いでしょう。
抜歯には、マイナスなことばかりでなく効率的に歯並びを美しく整えられるメリットがあることを覚えておきましょう。
インビザラインで抜歯をするデメリット
インビザライン矯正で抜歯をするデメリットは、以下の4つです。
- 健康な歯を抜くことになる
- 歯科医師の技術が必要になる
- 治療期間や治療費がかかる
- 痛みが出たり腫れたりする可能性がある
自分の健康な歯を失うことに抵抗感がある方は多いでしょう。抜歯後の痛みに不安を感じる方もいらっしゃいますが、ほとんどの場合1週間程度で落ち着きます。
また、抜歯をしてインビザライン矯正をする場合は、非抜歯の症例より治療の難易度が高くなります。歯科医師の知識と技術が必要になるので、抜歯が必要な場合はインビザライン矯正の治療実績を積んでいる歯科医師のもとで治療を受けたほうがいいでしょう。
抜歯をすると、歯の移動距離が増えます。インビザラインでは1ヶ月でおよそ0.5〜1mm程度歯が動くといわれています。個人差がありますが、小臼歯の横幅は7mm程度あります。
抜歯した分の7mmのスペースを埋めるためには、1年前後の治療期間がかかるでしょう。治療期間が長くなるとその分通院する回数も増えますので、治療費がかさむ場合もあります。
インビザラインで抜歯が必要なケース
インビザライン矯正で抜歯が必要になるケースは、以下の症例です。
- 歯の移動スペースを十分に確保できない場合
- 重度の出っ歯
- 親知らずが歯並びに悪影響を与える場合
叢生(そうせい)や八重歯など、歯が重なり合っている歯並びでは、歯の移動スペースを十分に確保できないことが多くあります。その場合、歯列内に歯をうまく並べられなくなるので抜歯が必要になります。
出っ歯の場合も、軽度であれば抜歯が必要ないこともありますが、重度の出っ歯であれば後ろに歯を下げるスペースを作るために抜歯が必要でしょう。親知らずが横向きに生えているなど歯並びに悪影響を与える場合、矯正治療を始める前に親知らずを抜歯することがあります。
虫歯や歯周病が進行していて残すことが難しい歯の場合も、先に抜歯をしてから矯正治療を開始することが多いです。
インビザラインで抜歯が不要なケース
インビザライン矯正で抜歯が不要なケースは、以下の症例です。
- 軽度の歯列不正
- 必要なスペースが6mm以内の症例
- 抜歯以外の方法でスペースを確保できる場合
軽度の歯列不正であれば、抜歯の必要なくインビザライン矯正が可能なケースがほとんどです。
抜歯をしなくても3mm程度の歯の後方移動が可能なので、左右3mmずつ歯を後方移動させると歯列全体で6mmのスペースを確保できます。矯正治療に必要なスペースが6mm以内であれば、抜歯せずにインビザライン矯正ができるでしょう。
矯正治療をするにあたってどれくらいスペースが必要かは自己判断ができないので、歯科医院で相談したほうがいいでしょう。
抜歯をするタイミング
抜歯を行うタイミングは、症例や歯の状態によって異なります。歯並びに悪影響を及ぼす可能性がある親知らずや、虫歯や歯周病で保存が困難な状態になっている歯の場合は、多くの場合矯正治療を開始する前に抜歯します。
矯正治療のために小臼歯を抜歯する場合も、基本的には矯正前に抜歯するでしょう。症例によっては、ある程度歯並びを整えてから計画的に抜歯するケースもあります。
抜歯する本数や抜歯を行うタイミングは、事前に担当の歯科医師に確認してください。
抜歯以外で歯を動かすスペースを作る方法
抜歯せずに歯を動かすスペースを確保する方法もあります。抜歯するほど歯を大きく動かす必要がない場合は、以下の方法でスペースを作ります。
- IPR
- 歯を後方移動させる
- 歯列を拡大する
症例によってどの方法でスペースを確保するか異なってきますので、歯科医師と相談しましょう。
IPR
IPRとは、歯と歯の間を薄く削ってスペースを確保する方法です。ディスキングとも呼ばれています。
削るといっても、0.2〜0.5mmの極少量のエナメル質表層のみを削るため、痛みを感じることはないでしょう。虫歯のリスクが高まることも基本的にはありません。
「歯を削りたくない」と思われる方もいらっしゃいますが、IPRはスペースを作れるだけでなく、歯の大きさを整えたりバランスを調整したりできるメリットもあります。歯に負担がかからない程度の切削量なので、それほど心配する必要はありません。
歯を後方移動させる
歯の後方移動が可能なケースは、奥歯の後ろに骨がある場合です。親知らずがあったり顎が小さかったりすると、後方移動を実施するのは難しいでしょう。
歯列を拡大する
歯列の幅を拡げることで、スペースを確保することが可能です。歯列の拡大には、横に拡げる側方拡大と、前方に拡げる前方拡大があります。
ただし、側方拡大にも前方拡大にも限度があります。無理に拡大してしまうと噛み合わせが合わなくなるなどの問題が生じるでしょう。
前方拡大は前歯が内側に傾斜している場合に有効ですが、バランスを考えなければなりません。バランスが悪ければお口を閉じにくくなったり、Eラインのバランスが崩れたりする可能性もあります。
Eラインとは、顔を横から見た時に鼻先から顎先を結んだラインのことです。
横顔の美しさを決める指標のひとつとなっており、アメリカではこのラインの内側に口元がある状態が美しいとされています。日本人の場合は骨格が違うことから、Eラインから口元がはみ出さず唇がラインに触れる程度であれば美しいとされています。
歯列を拡大させることで歯を動かすスペースを確保できますが、噛み合わせのバランスやEラインに注意する必要があります。
まとめ
矯正治療を始めるにあたって、抜歯の有無が気になっている方も少なくありません。「抜歯が必要な場合、インビザラインでは治療ができない」と思うかもしれませんが、抜歯してインビザライン矯正をすることは可能です。
抜歯をすると、ご自身の健康な歯を失うことになるので抵抗感がある方も多いでしょう。
しかし、抜歯をしたほうがきれいに歯並びを整えられたり、効率よく歯を動かせるため治療期間を短縮できたりするメリットもあるのです。そのため、矯正のために抜歯を行うのは悪いことばかりではありません。
抜歯が必要なケースにもかかわらず、抜歯せずに無理に矯正をした場合、思ったような結果にならず後悔することもあります。抜歯に抵抗がある方は、抜歯してインビザライン矯正をするメリットとデメリットを理解しておきましょう。
どうしても抜歯をしたくない場合は、IPRや後方移動、歯列の拡大で治療が可能か歯科医師に相談してみてください。