こんにちは。京都市伏見区にある「ひらうち歯科」です。
子どもの歯並びや噛み合わせに不安を感じた際、矯正治療の一つとして急速拡大装置が提案されることがあります。
これは、上あごの骨を広げて歯が正しく並ぶスペースをつくるための装置で、主に成長期の子どもに使用されます。永久歯の萌出を助けたり、将来的な抜歯や本格矯正を回避したりする目的で使われることもあります。
しかし、使用には一定の注意点や費用の目安があるため、事前に理解しておくことが大切です。
この記事では、急速拡大装置の基本的な仕組みやメリット、注意点、費用について詳しく解説します。
目次
急速拡大装置とは
急速拡大装置とは、成長期の子どもに用いられる歯科矯正装置の一つで、上あごの横幅を左右に広げることで歯がきれいに並ぶためのスペースを確保する役割があります。
装置は上あごに固定されており、中央のネジを段階的に回すことで上あごの幅を拡大していきます。この処置は、永久歯が正しく生えるスペースが不足している場合や、上あごが下あごよりも狭く交叉咬合の傾向がある場合に行われることが一般的です。
成長期の上あごの骨はまだ柔らかく可動性があるため、この時期に処置を行うことで、短期間で効果を得やすいとされています。
急速拡大装置を使用するメリット
ここでは、急速拡大装置を使用することで得られる主なメリットについて解説します。
永久歯がきれいに並ぶスペースを確保できる
乳歯から永久歯への生え変わりが進む時期に、あごの幅が狭いと歯が並ぶスペースが不足し、歯並びが乱れる原因になります。
急速拡大装置はこのスペースが不足している場合に使用される装置であり、上あごの横幅を広げることによって、将来的に抜歯が必要となる可能性を減らすことができます。成長期であれば骨の柔軟性があるため、自然なかたちで拡大が進み、無理のない矯正が可能になります。
噛み合わせの改善につながる
上あごが下あごより狭い場合、奥歯の噛み合わせがずれて交叉咬合になることがあります。交叉咬合はあごの成長に偏りを生じさせ、顔の左右差や発音の乱れの原因となることがあります。
急速拡大装置によりあごの幅を適切に調整することで、上下の歯が自然に噛み合う位置に導かれ、機能的な噛み合わせの確立が期待できます。
将来的な矯正治療の負担を軽減できる
矯正治療をあごの成長後に始めると時間や費用の負担が大きくなりがちです。
骨格的な問題を早期に解消しておくことで、将来的な本格矯正の必要性を減らすことにつながる場合もあります。特に、あごの骨を広げる処置は成長が止まったあとには難しくなるため、急速拡大装置は小児期ならではの選択肢といえるでしょう。
口呼吸や発音障害の改善が期待できる
あごの幅が狭いことで、舌がうまく収まらず、口呼吸や発音の不明瞭さにつながることがあります。急速拡大装置を用いることで、口腔内のスペースが広がり、舌の位置や呼吸の通り道が改善される場合があります。
とくに鼻腔の空間が広がることで、鼻呼吸がしやすくなることがあり、これは小児の健康全体にとっても良い影響を与えます。
成長の力を利用できる
急速拡大装置の最大の利点は、成長期という限られた時期にだけ行える骨格そのものの拡大が可能な点です。成長が止まったあとの矯正では、歯の移動に頼るしかありませんが、成長期であれば骨の成長を促すことができ、治療の効果がより高まります。
これは成人矯正では得られない、小児矯正ならではの大きなメリットです。
急速拡大装置を使用するデメリット
ここでは、急速拡大装置を導入する際に考慮すべきデメリットについて解説します。
違和感や痛みを感じやすい
装置が口の中に固定されることにより、装着初期には強い違和感を覚えることがあります。特に、舌が動かしにくくなることで発音がしづらくなる、食べ物が装置に挟まりやすいといった不便さを感じることが多いようです。
また、拡大時にはあごに力が加わるため、一定期間、歯やあご周辺に痛みや圧迫感を伴うこともあります。これは一時的なものではあるものの、日常生活に影響を及ぼすこともあるため、十分な理解とサポートが必要です。
装置の管理と衛生面に注意が必要
急速拡大装置は取り外しができない固定式のため、装置の周囲に食べ物が詰まりやすく、また清掃も難しくなります。歯ブラシが届きにくい部位が増えることで、虫歯や歯肉炎のリスクが高まります。
使用中は普段以上にしっかりと歯磨きをする必要があり、特に保護者の方による仕上げ磨きや日々の口腔ケアへの配慮が不可欠です。歯科医院での定期的なチェックと、歯科医師からの適切なブラッシング指導も重要なポイントです。
会話や食事に支障が出ることがある
装置による物理的な制限により、食事や会話に支障をきたすこともあります。特に、硬い食べ物や粘着性のある食品は装置の破損や不快感を引き起こす可能性があるため、食事内容に注意が必要です。
また、舌の動きが制限されることで一時的に発音が不明瞭になったり、滑舌が悪く感じられたりすることもあります。これらの変化は時間とともに慣れることが多いものの、子どもにとってストレスとなることもあるため、周囲の理解と励ましが大切です。
思ったような効果が得られないこともある
急速拡大装置は成長期に高い効果を発揮しますが、個人差によっては拡大効果が不十分になる場合もあります。例えば、骨の成長速度やあごの柔軟性により、計画よりも幅が拡大しないことがあり、その場合は追加の矯正治療が必要となることもあります。
また、装置の管理が不十分だった場合にも、効果が限定的になることがあります。
急速拡大装置を使用する際の注意点
安全に治療を進めるためには、いくつか注意点を理解しておく必要があります。
装置を清潔な状態に保つ
装置は口の中に固定されたまま数カ月間使用されるため、清掃が不十分になると虫歯や歯肉炎の原因になります。特に装置の周囲には食べ物のカスがたまりやすく、通常の歯磨きでは磨き残しが出やすいです。そのため、専用のブラシやフロスを使った丁寧な清掃が求められます。
また、子ども自身のブラッシングでは限界があるため、保護者の方による仕上げ磨きや、定期的な歯科医院でのクリーニングも重要です。
ネジの調整は歯科医師の指導のもとで行う
急速拡大装置の中央にはネジがあり、これを定期的に回すことであごの幅を広げていきます。ネジの調整は歯科医師の指導に従い、指定された回数とタイミングで行うことが大切です。
無理な操作や過剰な調整は、歯や骨に不要な負担をかけ、痛みや炎症を引き起こすリスクがあります。万が一、ネジの回し方がわからなくなった場合は、自己判断せず、速やかに歯科医院に連絡しましょう。
硬いものや粘着性の高い食べ物は避ける
装置の構造上、硬いものや粘着性の高い食品を食べると、破損や脱落の原因になります。例えば、ガムやキャラメル、ナッツ類などは避けたほうが良く、基本的にはやわらかい食材を選ぶよう心がけると安心です。
また、装置に食べ物が詰まりやすいため、食後には必ずうがいや歯磨きを行い、口腔内を清潔な状態に保つことが求められます。
痛みや違和感があるときは歯科医師に相談する
違和感や痛みが強い場合、口内炎などの症状が出た場合には、我慢せずに歯科医師に相談することが大切です。治療中に無理なく生活できるよう、必要に応じて装置の調整を行うこともあります。
急速拡大装置の費用
急速拡大装置の治療費用は、自由診療となるため医療機関ごとに異なりますが、おおよそ3万円から10万円前後が一般的な相場とされています。これに加えて装置の装着・調整にかかる料金のほか、経過観察や定期検診の費用がかかる場合もあります。
多くの歯科医院では、初回相談料や精密検査料が別途かかるケースもあるため、事前に見積もりを確認しておくことが重要です。
また、急速拡大装置は第一期矯正(子どもの骨格の成長を利用する矯正)に分類され、のちに本格的な矯正が必要になる場合は、追加費用が発生することもあります。通院回数や治療期間も考慮し、費用の総額を把握しておくと安心です。
まとめ
急速拡大装置は、成長期の子どもの上あごの幅を広げることで歯が並ぶスペースを確保し、噛み合わせを整えるための固定式矯正装置です。永久歯の正しい萌出を促すほか、交叉咬合や口呼吸の改善にもつながるなど、多くのメリットがあります。
一方で、装着中は違和感や痛み、食事や発音への影響が出ることもあり、日々の口腔ケアや装置の管理には注意が必要です。費用は3万〜10万円前後が目安で、通院や追加治療の可能性も含め、事前に歯科医師に確認することが大切です。
小児矯正を検討されている方は、京都市伏見区にある「ひらうち歯科」にお気軽にご相談ください。
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